Day: 2023年3月12日

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スチュワードシップは日々進化!   教会員

昨年のスチュワードシップ月間の巻頭言に、私は奏楽者であり続けることの良い管理人になりたいと、決意表明のような気合いで記した。が…。劇的に上手になったわけではない。こつこつと準備をし、日曜日オルガンの前に座る。そして時々間違える!

ところで、「音楽」という分野の賜物を神様から戴いたと自負するが、自分が奏楽することだけが管理人の務めだろうか、神様が管理しなさいねと委ねてくださるものは、時と共に変化するのかもしれないと思うようになった。

昨春、私は転職をした。その際、前職の先輩が「神様の福音の種を心に携えていってらっしゃい」と送り出してくれた。その言葉を胸に高齢者向けデイサービスという新天地に足を踏み入れた私は、介護職ではないが様々なサポートの傍ら音楽療法の一端を担わせてもらっている。

一つ一つ出来なくなっていく寂しさ、不安、苛立ち…福音の種を携えて私はどう寄り添えるだろうか。しかし、そんな思いはすぐに打ち砕かれた。

ある日、プログラムの隙間時間にオルガンの音色で「G線上のアリア」を演奏した。じっと聴き入っている方、気持ち良くこっくりこっくりしている方。ものの数分の静かな時間の後、1人の利用者さんが立ち上がって一所懸命に椅子を元に戻していた。

転倒防止のため、椅子から立ち上がる時は必ずスタッフが付き添うことが徹底されているので慌てて駆け寄ると「あんな素敵な音楽を聴かせてもらってこのくらいのお手伝いはしたいわ」と、うっすら潤んだ眼差しでしっかりと私の眼を捉えて微笑まれた。音楽が大好きで、いつもふんわりご自分の世界の中にいて、会話は殆ど辻褄が合わないその方の、まっすぐに輝く眼差しは、どストレートに私の心に飛び込んできた。もう施設に入られて会うことは叶わないあの方の、忘れられない一瞬の出来事だった。

この一年、もうよくわからない…すっかりできなくなった…と嘆きつつ今日を一所懸命に生きておられる方々から、私は一瞬の輝きをたくさんもらい続けている。そして、前職で疲れ切っていた私の心が少しずつ癒されていくのを感じている。私に何が出来るかなんて、随分と思い上がっていた。クリスチャンであってもなくても、バリバリ動けても動けなくても、神様が用いられた時、一瞬の眼差しさえも人を慰め活かして輝くのだと知った。私もいつかは弾けなくなるだろう。奏楽者の良い管理人として、次世代に伝え育てる働きと祈りを示されるこの頃である。