石を投げてはならない            教会員

Home / 週報巻頭言 / 石を投げてはならない            教会員

皆さんの記憶にも新しいと思いますが、7月に母親が3歳の娘を家に残して旅行に行き、残された娘が餓死をするという事件がありました。あまりにも可哀そうで胸が引き裂かれそうでした。当然、ネット上ではこの母親に対して誹謗中傷の言葉が溢れ、まるで悪魔のように取り扱われていました。私もこんな人に母親になる資格はないと思いました。しかし、自分の母親っぷりを思い返してみたとき、私は決して彼女を責めることはできないと思いました。もし私もたった一人で子供を育てていたとしたら、どうなっていたかはわかりません。何度「ママ」でいることから逃げたいと思ったことでしょう。一人になりたい、自由な時間が欲しい、これは子育て真っ最中のお母さんなら、誰でも思うことではないでしょうか。もちろん彼女が犯してしまったことは、取り返しのつかないことです。しかし、彼女を責めるだけでは何も解決しません。

近年、こうしたネット上での誹謗中傷は社会問題になっています。場合によっては相手を死に追いやることもあります。私たちの言葉は剣よりも鋭い凶器になる可能性があるのです。顔見知りであれば言わないようなことも、相手が誰だかわからないのをいいことに、精神がボロボロになるまでひどい言葉をあびせ続ける。ここには人間の罪深さがよく表れていると思います。

現在、日本は、基本的人権が憲法で保障されています。しかし、私たちはハラスメントや差別、誹謗中傷など、手でつかむことができない空気や言葉による攻撃に怯えながら生きているように感じます。冒頭でお伝えした事件について色々と考えたとき、イエス様の言葉がふと頭に浮かびました。ヨハネによる福音書8章は、「姦淫の罪を犯した女」の箇所です。周囲の人々が石打の刑を望む中、イエス様はこう言われます。「あなたがたの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」このイエス様の言葉に、平和を創り出す者として生きるヒントが隠されているように思います。自分のことは棚に上げ、何か気に食わないことがある度に相手を責めていては、いつまでたっても平和な世界は訪れないでしょう。まずは自分自身の行いに目を向け、投げかける言葉をよく吟味し、相手の気持ちに寄り添う。そういう人になりなさいと、イエス様は今日も語り語りかけてくださっていると思います。

イエスは再び言われた.。「わたしは世の光である。わたしに従う者は暗闇の中を歩まず、命の光を持つ。」ヨハネによる福音書8章12節