戦争はしない          教会員

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今、私は一枚のカードを見つめている。そこには、少年が赤ん坊を背負い、背筋を伸ばして立っている姿がある。少年は、歯を食いしばり一点を見つめている。このカードを見ていると、心が張り裂けそうになる。

以前カトリックで葬儀があったときに、テーブルの上に積まれていたカードに何気なく目をやった私は、動けなくなった。それを見ていたカトリックの姉妹が「どうぞ持って行って」とくださった。これは、ローマ法王が核兵器廃絶を繰り返し世界に強く訴えられ、今年の1月に、有名な長崎で撮影された「焼き場に立つ少年」の写真をカードに印刷し、裏に「戦争が生み出したもの」という文言と、自身の署名「フランシス」を記載するよう要請し、毎年1月1日に祝われるカトリック教会による「世界平和の日」に先立って配布されたものであった。

亡くなった弟を背負い、焼き場で順番を待つ少年。少年は、穴を掘っただけの焼き場で、白いマスクの大人に赤ん坊を手渡し、目の前で弟は荼毘に付される。アメリカ占領軍のカメラマン、ジョセフ・ロジャー・オダネル氏が撮影したもので、彼のコメントがある。「それからまばゆいほどの炎がさっと舞い上がり、真っ赤な夕日のような炎が、直立不動の少年のまだあどけない頬を赤く照らしました。その時です。炎を食い入るように見つめる少年の唇に血がにじんでいるのに気づいたのは。少年があまりきつくかみ締めているため、血は流れることもなくただ少年の下唇に赤くにじんでいました。」

平和を訴えるなら、何も語らず、この写真一枚で十分だと思う。戦争とは、こういう事なんだと感じてくれさえすればよい。戦争とは、弱い者が犠牲になる。大切な家族を失う。これから、日本では戦争を知らない人たちだけになる時がくる。私も、戦争を知らない。しかし、急激な世界の国同士の自国ファーストの連鎖は止まらず、自国主義のアメリカにくっつき、アジアの中でも孤立をする日本は、決して安泰ではない。一触即発の関係は、さらに心無い政治家の発言で、より危険になる。だからこそ、今私たちは、過去の戦争に至った過ちを心に刻み、世界各国に戦争の悲惨さ、原爆の恐ろしさを訴え、平和憲法を掲げ、世界の皆が平和になる道をリードしていくべきではないだろうか。

『心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』ルカよる福音書10章27節