憲法9条こそが人類に希望をもたらす

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先週、自らの戦争体験を通して、平和を訴え続けたむのたけじさんが亡くなった。むのさんは5月3日の憲法集会で、101歳にもかかわらず車いすで参加し、憲法9条、平和の大切さを次のように訴えておられた姿が私の目にも焼き付いている。

「私はジャーナリストとして、戦争を国内でも海外でも経験した。相手を殺さなければ、こちらが死んでしまう。本能に導かれるように道徳観が崩れる。だから戦争があると、女性に乱暴したり物を盗んだり、証拠を消すために火を付けたりする。これが戦場で戦う兵士の姿だ。こういう戦争によって社会の正義が実現できるか。人間の幸福は実現できるか。戦争は決して許されない。それを私たち古い世代は許してしまった。戦争を始めてしまったら止めようがない。ぶざまな戦争をやって残ったのが憲法9条。9条こそが人類に希望をもたらすと受け止めた。そして70年間、国民の誰も戦死させず、他国民の誰も戦死させなかった。これが古い世代にできた精いっぱいのことだ。道は間違っていない。

 国連に加盟しているどこの国の憲法にも憲法9条と同じ条文はない。日本だけが故事のようにあの文章を掲げている。必ず実現する。この会場の光景をご覧なさい。若いエネルギーが燃え上がっている。至る所に女性たちが立ち上がっている。戦争を殺さなければ、現代の人類は死ぬ資格がない。この覚悟を持ってとことん頑張りましょう。」

むのさんが、この集会に参加した後に肺炎を患い、亡くなられたことを知った時、死ぬ覚悟をもって、戦争を殺そうとしたその姿に深い感動を覚えた。

祈祷会で学んだヨエル書4章に、神が諸国の民に宣戦布告して、「鋤を剣に、鎌を槍に打ち直せ」4:10と言われた言葉に、現代に対する危機を感じた。「剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」イザヤ2:4・ミカ4:3と語られた言葉とは全く逆である。鋤や鎌を、国土を破壊し、人の命を奪う剣や槍に打ち直すこともできれば、その反対に、剣や槍を、作物を育て、命の成長を見守るための鋤や鎌に打ち直すこともできる。戦時中の日本は国民を総動員して、「鋤を剣に、鎌を槍に打ち直せ」を実践し、その結果、多くの命を奪い、敗戦の苦しみを味わった。その反省に立って、戦後の日本は、「剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする」ことを大切にしてきたのではないか。しかし、今、安保法制によって、再び「鋤を剣に、鎌を槍に打ち直せ」が現実味を帯びてきたのである。憲法9条こそ、「もはや戦うことを学ばない」唯一の平和憲法として、大切にしていきたい。