平和へのヒント        教会員

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本日午後、沖縄の日本基督教団佐敷教会牧師 平良修先生の平和運動を取り上げたTV番組「イエスと歩む沖縄」が上映される。計らずも今日の巻頭言は、その平良先生のお連れ合いである悦美さんの事を書こうと思う。悦美さんはちょうど一年前、辺野古のゲート前で「全基地撤去せよ」のボードを持って座っていた時、車の事故に遭った。両足5ヶ所骨折という重傷を負いながらも平和運動への熱意は衰えることなく、半年後にはまた辺野古での行動に復帰された。そして今なお精力的に座り込み活動をし、沖縄を守る戦いを続けておられる。そんな悦美さんが、実は何とも愉快なのである。これは、先月の「首相官邸前でゴスペルを歌う会」でご子息の愛香牧師から伺った母・悦美さんのエピソードである。

その日も座り込みの市民に対して機動隊によるごぼう抜きが始まった。(ごぼう抜きとは、工事車両を通すため、道路に座っている人々を機動隊が抱えて他の場所へ移動させることである。)機動隊員が悦美さんを抱え上げようとした時「まだね、骨がくっついてないからそぉーっとね!」と言うと機動隊員はそぉーっと悦美さんを抱えて移動させ、そぉーっと降ろしていったのだそうだ。また愛香先生に「これはもう母の趣味」と言わしめるのは機動隊の人に話しかけること。威圧的に真正面に立っている時は黙っているしかないのだが、悦美さんがそっと横に立って「暑いねぇ。水分取ってる?」とか「お金もらってるんだから一所懸命お仕事して、てきとーにサボりなさいねぇ」と話しかけると、彼らはしかめっ面のまま「はい」と返事をするのだそうだ。「間違えてはいけない。私たちは機動隊員と戦っているのではないよ。」悦美さんは息子の愛香先生にそう語られる。

ある日悦美さんは、機動隊員の中に、あの事故の日道路で動けなくなっている悦美さんを安全な場所へ運んでくれた青年を見つけた。早速「私を覚えてる?」と話しかけると彼はやはり表情を崩すことなく「はい」と返事をしたと言う。対立感情があって当然の状況で、悦美さんの心の垣根の無さに驚く。きっと話しかけられた機動隊員らもびっくりして思わず返事をしたのだろう。また、悦美さんは事故後、たくさんの「祈っています」のメッセージに「骨折はいずれ治る、私の快復を祈るくらいなら沖縄の解放を祈ってほしい。」とおっしゃっていたそうだ。

主に祈り求めるこのブレの無さ、そして心の垣根の無さ。この二つの中に平和への大切なヒントが隠れている気がするのである。