今、使徒言行録を学んでいるが、使徒たちの姿に大変励まされる。それは、順風満帆な中で伝道したのではない。むしろ、危機の中で伝道の働きが拡大していった。最初、神の言葉が広まる範囲はエルサレムに限定されていたのに対して、9章では、ユダヤ、ガリラヤ、サマリアの全地方に広がっていった。この成長をもたらしたのは、ステファノの殉教の死であり、それをきっかけにして起った迫害によって信者たちが散らされ、その行く先々で伝道して、主を信じる人たちが各地で多く起こされていったからである。危機は、一転して伝道の好機となったのである。
新生宣教団から毎月ニュースレターが教会に送られてくるが、その中に、「現在中国のクリスチャン人口は1億6千万人を超えただろうと言います。その数は毎年1200万人ずつ増えているとのことです。当局は何よりも聖書を恐れています。キリスト教の急速な成長は社会主義体制にとって最大の脅威であると現に言われています。従って、規制が緩和されることは期待できません。迫害や嫌がらせが止んだり、圧力が緩むことは期待できません。しかし、私たちはリバイバルが続くことを祈る必要があり、沢山の人たちに御言葉を提供するためになすべきことをする必要があります。」と記されていた。そして、聖書が足りないので、大量の中国語聖書がこの埼玉の地で印刷され、中国にいるクリスチャンに届けられている。そのような厳しい状況の中で、むしろ主を信じる人たちが多く起こされている。危機は、伝道の好機となっているのである。
私たちにとって、危機は決してマイナスではない。カール・マイケルソンという神学者の書いた『危機に生きる信仰』という本がある。人生には七つの危機があると言う。「不安の危機、罪責の危機、疑惑の危機、職業の危機、結婚の危機、苦難の危機、死の危機」。しかし、危機はまた好機でもあるという。生きる勇気を失わせる、これら一つ一つの危機が、実は神への信仰に目覚めさせる好機となり、信仰を奮い立たせてくれる願ってもないチャンスにもなるという。これと同じようなことを、富田敬二先生も語っていた。「伝道するのに困難である時、それは実は福音を語るのに最もふさわしい時だ。世の中がどんどん悪くなっていく、何と恵まれたことではないか。今こそイエス・キリストの物語を伝える好機なのだ。」パウロも「御言葉を宣べ伝えなさい。折が良くても悪くても励みなさい。」Ⅱテモテ4:2と勧めている。私たちも内憂外患の時代を迎えているが、この危機の時こそ伝道の好機として、御言葉を宣べ伝えていきたい。