カトリック松が峰教会を訪ねて

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先日、妻の実家のある宇都宮に行った時に、初めて市内にある「カトリック松が峰教会」を訪ねた。聖堂に入って、その壮大さに圧倒された。当教会(旧宇都宮天主堂)は1888年に創立し、その後松が峰町に移転、1932年にスイス人建築家マックス・ヒンデルの設計で、現在の大聖堂が完成した。正面に2つの尖塔をもつ、本格的なロマネスク様式の荘厳な聖堂である。鉄筋コンクリート造りであるが、外壁、祭壇、柱など、ほとんどが大谷石で造られている。国の登録有形文化財に認定されており、宇都宮のシンボルのひとつとなっているが、戦争の災禍を受けた教会でもあった。

1945年宇都宮大空襲の時に、大屋根が焼け落ち、終戦後の資材が乏しい中で修復が行われ、2年後には完成し、信者たちの精神的な拠り所となってきた。また、聖堂にはアンジェラスの鐘が取り付けられ、近隣に美しい音色を響かせていたが、太平洋戦争が激化した1943年、貴金属供出のため、鐘は国へ没収された。しかし、戦後、鐘の再現を望む声が高まり、1982年信徒と市民の献金で、鐘が再現された。鐘を聞く人々が一人でも多く、愛や平和について考えてくれることを願いながら・・・毎日曜日やクリスマス、元日、その他の祝日、結婚式に鳴らされている。

そこで頂いた週報の「今、選択のとき」という文書が心に留まったので、紹介したい。

今、世界も日本も危機的状況の中にあります。自国中心主義が広がり、極右勢力の台頭による難民、移住者への排斥、また紛争やテロが頻発するなど、世界全体が暴力的になりつつあります。その背景には、想像を絶する冨の格差があり、またそこへ軍需産業の利権がからむなど、歯止めが効かなくなってきています。

残念ながら、日本はその流れの中に組み込まれるというよりも、積極的にその傾向へと突き進んでいます。多くの人が「ぼんやり」させられているうちに、日本政府は平和憲法の精神を無視して軍事力一辺倒の政策で突き進んでおり、市民への監視、情報コントロールを強力に進めてきています。国連特別報告者が「メディアの公平性や独立性」「プライバシーや表現の自由」について数次にわたって強い懸念を表明していることは記憶に新しいところです。・・・・この現実の中に教会は派遣されています。私たちを派遣し、共に歩んでいるキリストはどこに向かって歩めと呼びかけているのでしょうか。その声を聴きつつ現実を直視し、流れに身を任せるのではなく、自覚し、決意し、平和を選び取っていきたいものです。個人として、教会として。   (2017.8.6 松浦悟郎 名古屋教区司祭)